2013年4月7日日曜日

この子全然ダメなんです

FMT整体では学生さんに、自分の口で、
自分の症状の説明をしてもらうようにしている。

中には小学生でも、しっかりと説明ができる子もいるし、
高校生になっても、ご両親に説明してもらうことを
頼りにしている子もいる。

つい最近来ていた女子高生は、恥ずかしがり屋で、
最初は僕と目を合わせてもくれなかった。

問診をしていても、

「いつ痛くなったの?」

「うーん、、、」

「1ヶ月前くらい?」

「、、、はい」

「練習中に痛めたの?」

「、、、はい」

みたいな感じだった。

初めは緊張をしているだけの場合があるけど、
この子はすごくシャイだった。

初回の施術のあとに、

「先生、何とか力になってあげたいんだけど、
○○ちゃんのこと分からないと
何もしてあげられないから色々と教えてね」

なんて言ったら、次回来たときには、
言葉につまりながらも一生懸命に説明をしてくれた。

僕も元々無口で、恥ずかしがり屋な方だったから、
彼女の気持ちが少し分かる。

本人なりに「このままじゃダメだ」「何とかしたい」という
気持ちがどこかでちゃんとあって、機会さえあれば、
やってみれば、意外とできるものだったりする。

「おー、すごいね。前回よりもちゃんと説明ができてるじゃん」

と言ったら、恥ずかしそうに笑った。

おっとりとしているけれど、反応はゆっくりだけれど、
彼女なりにマイペースにがんばっているのが分かる。

回を重ねるごとに、彼女は目をしっかりと合わせて、
自分の口で説明ができるようになった。

質問をすると、ちゃんと返答をしてくれて、
会話も成り立つようになっていた。

笑顔を見せてくれる回数も増えていた。

通院されるようになってからしばらく経ち
「ランニングをすると痛いときがある」というから
「ちょっとそこを走ってみてよ」と言った。

ニコニコと笑顔を浮かべながらも、
少し恥ずかしそうにしていた。

すると、その姿を見て、彼女のお母さんが、

「ほら、早く走りなさい」

とおっしゃった。

パタパタと足音を立てて走る姿は、
ペンギンが走っているみたいで、
お世辞にも運動センスが良いとは言えないけれど、
「悪くないな」と思った。

少し修正されれば、もっと伸びていくだろうと。

ひと通り施術を終えて
「一端これで様子を見てみましょう」
と説明をしたあと

「彼女はなかなか良い物を持っていますよ」と言ったら、

ピンと来ない表情をされて
「いえいえ、この子は全然ダメなんです」とお母さん。

本人も首を横に振って、否定していた。

「いえ、きっと彼女は遠慮さえなくなれば、
能力を発揮すると思いますよ」と言ったけれど、

お母さんは「そんなこと全然ないんですよ。
自分の口でちゃんと説明もできないし」とおっしゃった。

謙遜されているのだけれど、そんな些細な一言が、
彼女のセルフイメージを作っていく。

彼女の頭に「自分はダメなんだ」と頭に刷り込まれる。

この場だけではない。

きっとこれまで何百回と、刷り込まれてきたのだと思う。

僕はお世辞で言ったわけではなくて、
本心からだったのだけれど、
伝わらなかったかもしれない。

帰り際、心なしか彼女の表情が
少し曇っていたように見えたのは、
気のせいだろうか。

彼女と出会って、3ヶ月も経っていないけれど、
施術の回数を重ねるたびに、
どんどん説明が上手になり、
コミュニケーションをとれるようになった。

そんな娘さんの小さいけれど、
確かな変化に気がついて欲しかった。

彼女の持っている可能性を引き出し、
伸ばしていくのは、周りの大人たちの役割だと思う。

施術家の目的は、ただケガを治すことだけではない。

彼女の人生に何か少しでも
良い影響を与えることができたら。

彼女の魅力を少しでも
引き出せることができたら。

そんな施術家になるために、
これからも僕たちは日々精進を重ねていく。


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