2012年2月27日月曜日

あとどれくらいで治りますか?

「あとどれくらいで治りますか?」

「もう来ることがキツイんです」

昨日、三重から通院している患者さんの、
お母さんからこのような質問がありました。

娘さんは円盤投げで全国大会3位に
なったこともある強い選手です。

昨年、ベンチプレス(筋トレ)中に、
肩を痛めてしまい、それからは、
病院のリハビリに通われていました。

しかし、そのリハビリは痛くて、
1か月通っても思うような改善が
見られませんでした。

現在、週に1回のペースで通われていて、
当初は何もせずジッとしているだけでも
肩が痛かったのが、

4回の通院で、現在は5割くらいの
力であれば、円盤を投げる練習が
できるようになってきました。

とても順調なように見えました。

しかし、いつも彼女を送ってきてくれる
お母さんは仕事をされていて、

仕事が終わったら娘さんを迎えに行き、
そのまま三重から愛知まで2時間ほど
かけて来院しているのです。

しかも、夜遅くに高速を運転するので
怖いでしょう。

それ以外にも、いろいろな都合や、
焦りなどもあって、今回のような、
質問がありました。

おっしゃる気持ちはよく分かります。

けれども、私たちはこの質問に
答えることができないのです。

早く治してほしい、あと何回ですか、
焦る気持ちもあって、そう思うでしょう。

私たちも大体の目安があるので、

「おそらくこれくらいかかるでしょう」

「あと○回はかかるでしょう」

というのは答えられます。

けれども、例えば他の症状に
置き換えてみてください。

例えば、風邪を引いた人が、
病院に行って、

「あと何回通ったら治りますか?」

と聞いたとしたら、

病院の先生は、

「そんなことは分かりません」

と言うに違いありません。

そもそも風邪を治すのは、
お医者さんではありません。

もらった薬でもありません。

風邪を治してくれるのは、
風邪の人自身の体です。

何回通ったから治る
というものではないのです。

また風邪を引いているその人が、
治すために自宅で療養しているのか、

それとも、夜更かしして遊んでいたり、
飲みに行ったりしているのか、

で回復のスピードが全く変わります。

これは風邪でなくても一緒です。

例えば骨折だったとしても、

「あと何回通ったら治るんですか?」

「そもそも、そういうものではありません」

と答えるしかないでしょう。

一体、いつになったら治るのか、
先が見えないと不安になりますが、

そもそも、あと何回で治るのか
という質問に「あと○回です」とは
答えられるものではないのです。

体にだって色々都合があるのです。

厳しいようですが、あえていうなら、
「あなたの体に聞いてみてください」
と言うしかありません。

そして、実際のところは、ご本人も、
もう少し長くかかるということを
何となく分かっているのだと思います。

けれども、焦りもあるし、早く治したい、
練習にも復帰したいという気持ちから、

「早く治してください」

「あと何回かかるんですか?」

と不安やいら立つ気持ちを
ぶつけたくなるのだと思います。

そのような気持ちはよく分かります。

もうすぐ大事な大会があるのに、
ケガをしてしまったら、焦って、
すぐに治したいと思うでしょう。

そのために私たちも
できる限りのことをやります。

けれども、本当のことを言うと、
それは自分勝手なことです。

体も決して、あなたのことが憎くて、
ケガをしたわけでも、
治らないわけでもありません。

体はあなたのために、
最大のスピードで体を回復させようと
常に働いてくれているのです。

しかし、それに本人が気付かずに、
焦って無理に練習をしたり、
ケガを押して試合に出たりするので、
いつまでもケガが治らないのです。

それを「あと何回来たら治りますか?」
というのは非常に自分勝手なことです。

あなたの気持ちはよく分かりますが、

「少しは体の気持ちも考えてあげてください」

「治してくれることに感謝するならまだしも、
文句を言うとは体に失礼です」

と言いたくなります。

そして、そのことに気がつかない限り、
無理を繰り返して、何度も同じことを
繰り返す可能性があります。

私たちも早く治してあげたいのは
やまやまなのですが、

どんな素晴らしい技術を持ったとしても、
あなたが持っている回復力を超えて、
ケガを治すことは無理なのです。

私たちはあなたのケガを治すこと以上に、
このケガを繰り返しやすいパターンを
脱してもらうことに力を注ぎます。

いくらケガが治っても、何度も再発を
していたら、意味がありません。

選手として本当の意味で強くなれません。

だから、ときには耳の痛いことも言います。

「ただ、もう少しのガマンだから早く治して、
練習に復帰しようね」

というだけではなく、

「ケガをしたのはあなたの責任なのですよ。

そのことに気付かないと
何度もケガを繰り返してしまいますよ」

というメッセージも発信します。

けれども、分かっていただきたいのは、

「できるだけお金も時間もかけないで、
最短スピードで治したい」

という気持ちは私たちも同じなのですよ。

あなたの気持ちはよく分かるのですよ。

それだけは分かっていただきたいな。

中村 宇博

0 件のコメント:

コメントを投稿